知的障害児、特に自閉症児においては高次の象徴能力の障害が指摘されている。本研究は行動論的・語用論的立場から比喩表現の成立要因は何か明らかにし、その効果的な指導方法について明らかにすることを目的として行われた。今年度は生活年齢14歳〜18歳、精神年齢5歳〜7歳の4名の自閉症児に前訓練として曖昧図形カードを用いた命名課題を行い、さらに曖昧図形と輪郭線が異なる原刺激について命名訓練を行った。ベースライン条件ではいずれの対象児においても比喩表現は自発しなかったが、輪郭線が同一の原刺激を選択し、「ような」をモデルさせる訓練を挿入したところ最終的には全員が比喩表現が可能となり、視覚的手がかりを用いた手続きの有効性が明らかとなった。今後は「うまのようにはやい」など性質を表す非視覚性の比喩表現の成立条件について検討していく予定である。
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