筆者は平成6年7月から10月まで千葉県富里町に短期的に住み込み、この地域の生業経済や歴史変化などの背景を中心に調査を行った。平成6年11月から平成7年3月まで調査範囲を新橋という古い集落に限定し、家族制度、親族組織、人生儀礼、年中行事などとそれらの変化についてフィールド調査を行ってきた。 新橋の場合、日本全国の農村で一般的に見られるような社会現象が見られる。例えば、農業の機械化や農村における工業化、近代化が高度に進められている一方、家族内の農業人口は減少し、兼業化が進み、専業農家率は著しく低下している。また、農業に従事する青年層の割合は非常に低く、嫁不足が深刻な問題になっている。 しかし、集落の人々の日常生活をよく観察して見ると、伝統的な社会組織や儀礼は近代化に伴って変化している一部分もあるが、全く消滅されたのではなく、依然として人間関係に機能していると思われる。例えば、葬式儀礼において、新しい火葬は伝統的土葬に完全にとって代わっているが、伝統的な葬式儀礼は殆ど変わっていない。特に葬式儀礼の中で、伝統的な無縁講とカマス付き合いは依然として重要な役割をはたしており、日常生活の中でも人間関係を維持、強化している。 今後はこのような調査資料をよく整理、分析し、これまでの関連研究の成果を踏まえ、その位置付けを明らかにしてから、さらに中国との比較研究を展開していくつもりである。
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