平成6年度は、述部/動詞の意味特性と文アクセントとの関係に焦点をあてた研究が中心となった。その研究の結果、述部/動詞の文アクセントの有無に関与しているふたつの意味的要因が明らかになった。ひとつは、述部/動詞が行為を示すか否かであり、もうひとつは、述部/動詞が主語の一時的特性を示すのか永続的な特性を示すのか、ということである。 具体的には、現代英語において、述部/動詞が新情報の領域を形成している場合、「行為述語は文アクセントを担うが、非行為述語は、文アクセントを担わない」という一般化が成立する。そして、この一般化を用いれば、今まで別個に説明されてきたいくつかの種類の例を統一的に説明できることが明らかになった。さらに、行為対非行為の対立は、純粋に認知意味論的なものであるので、文法の枠組みに、「意味・音韻写像規則」を設定すべきことも明らかになった。 しかしながら、上述の一般化には、例外が存在する。そのうちの多くは語用論的要因によって説明できるが、語用論では説明できない例も存在するので、そのような例の説明を試みた。語用論的要因によって説明できない例は述部が主語の一時的特性を示すか否かという視点から説明できる。具体的には、「非行為述語のうち、主語の一時的特性を示すものは、上述の一般化のとおり文アクセントを担わないが、非行為述語でも主語の永続的特性を示すものは文アクセントを担う」という一般化が成立する。 上記二つの研究成果のうち、前者は、日本言語学会の機関誌『言語研究』に論文として投稿し、審査の結果採用され、平成7年中には出版されることが決定している。(現在印刷中。)また、後者は、Tsukuba English Studiesの13巻に、論文として、平成6年度中に発表している。
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