平成6年度に申請した研究実施計画(1.【インタフェレンツ言語学】の確立に向けての予備的研究/2.〈プソイドインタフェレンツ〉現象の解明)に基づき、平成7年3月現在、2編の研究論文を発表した。2編ともドイツ語で執筆したが、これは、ドイツでの出版を予定(ドイツ人研究者と共著の形で)しているからである。すなわち本研究は、平成6年度で終了するのではなく、今後も申請者の主要研究テーマとして継続される予定である。今回発表した論文は以下のとおりである。 1."Interferenzphanomene und Gesellschaft"(インタフェレンツ現象と社会)アルテス・リベラレス第55号(岩手大学人文社会科学部紀要)、1994年12月、87〜98頁 2."Vorstudie zur Interfernzforschung"(インタフェレンツ研究の為の予備的研究)平成6年度学内特別経費研究報告、1995年3月、15〜24頁 第1の論文は、いわゆるSKI.(soziokulturelle Interferenz:社会文化干渉)の研究で、90年代という混迷した社会状況や学問のボ-ダレス化から要請されてきた、萌芽的要素を含む研究として位置づけることができよう。プソイドインタフェレンツ(略:PI./疑似干渉)の研究もこの延長線上にあり、追って発表する予定である。 第2の論文では、申請者はあらたな言語学領域を提案した。すなわち、現在さまざまな分野で、既存の学問体系の境界が曖昧になるボ-タレス現象が見られるが、インタフェレンツ研究を行ってきた比較言語学や対照言語学では、現代言語学の枠組みの変動に対応しきれないところがある。従って、制度化し硬直化した学問は、枠組みの変動に合わせて、新たなる創造の努力を必要するのである。申請者は、狭い枠組みの中にあったインタフェレンツ研究を【インタフェレンツ言語学】として独立させ、さまざまな言語研究領域(場の理論や広告言語学など)に応用する道を開くことを当該論文において提唱した。論文題目は"予備的研究"としてあるが、ドイツで共著として発表する際は、"Ein Vorschlag zur Entwicklung der Interferenzlinguistik"(【インタフェレンツ言語学】確立へ向けての提言)とする予定である。
|