世代重複モデルに代表される貨幣経済モデルでは、内生的周期変動やサン・スポット均衡が存在するための条件はかなり限定的なものであり、われわれが直面している経済ではこれらの均衡は存在しないであろうというのがこれまでの一般的な考え方であった。これに対し、本研究では"near-rationality"(近似的合理性)の考え方を適用することによって、これまでの通説とは異なり、現実的なもっともらしい経済状況のもとでも、「サン・スポット均衡」による経済変動が引き起こされる可能性があることを明かにした。特に、貯蓄が利子率の増加関数である状況においても、内生的周期変動やサン・スポット均衡が存在することを示すと同時に、サン・スポット均衡のもとでの経済変動は、結果として社会的な経済厚生に大きな影響を与えることを示した。 この結果の一部は、一橋大学大学院の佐柄信純氏との共同研究として、日本経済研究センターのワークショップで発表され、その結果が「near-rationalityとサンVスポット均衡」というタイトルで『日本経済研究』に掲載される予定である。また、その成果の1部は英語としてまとめ、海外の専門誌に投稿する予定である。
|