本研究は、社会的に最適な廃棄物のリサイクリングないし処理計画を導くことを目的とした3年程度の研究計画の2年目にあたる。開始年度となる前年度研究「廃棄物関連統計の整備によるrecyclingの有効性と限界の研究」(1993年度科学研究費奨励研究(A)採択課題)では、基礎的研究として廃棄物関連統計の検討を行い、とくに現行産廃統計を利用することは定義および精度の点で問題があることを得た。 これを受けて、今年度実施の本研究においては、わが国におけるリサイクリングの実績の高い古紙を対象にとして、パルプ・紙・古紙の生産・回収・再利用について検討した。すなわち、パルプ・紙・紙加工品工業および古紙回収業(以上の業種を以下では紙産業という)および家計における、リサイクリング条件(リサイクリングが望ましいための条件および実行可能となるための条件)の経済学的解明を目的とした。その結果、 ・リサイクリングの直接の動機付けが資源保全より安い原価・最終処分場の延命化であること ・古紙利用率と回収率との差異を考慮したマクロ的なパルプ・紙・古紙フローの首尾一貫した記述 ・上記の動機付けとフローに基づき、市場経済下でのリサイクリングを線形計画法により定式化 ・上記の定式化により古紙利用率向上政策をシミュレート、『リサイクル55計画』達成困難を予測 等を得た。なお、これら二ヵ年間の研究は、「リサイクリングと廃棄物統計:古紙の事例を中心に」として泉弘志他編『経済統計学の新展開』、晃洋書房(1995年4月刊行予定)にまとめられた。 以上でリサイクリングの経済的考察をいったん終え、第三年度目以降はリサイクリング製品を製造する企業の経営計画・戦略や品質管理等の経営統計的内容を写真や映像も利用して追究する予定である。
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