研究対象として、微分方程式論の非線形楕円型固有値問題に焦点をあてて、研究を進めた。非線形問題は、当然、その非線形性により、固有値、固有関数の挙動、性質が異なる。本年度は、非線形項を、最も基本的な、pベキのものに焦点を絞って研究した。先ず、一般に大域的な、解のL-2分岐の問題と呼ばれるものについて考察した。一般的な次元、領域に対して調べるのには、いくつか困難な点があるので、まず最初に、空間次元が1次元な場合について、pが1より大きい時、固有値、固有関数が、固有関数のL-2ノルムが無限大に増大したとき、どのように振舞うかについて、一般にboundary layerとよばれる現象が起きることがわかった。この結果の拡張として、同じ方程式を高次元の球領域で考えた時に得られる正値球対称解の分枝についても、固有値の漸近挙動を、optimalな残余項評価も含めて得ることができた。さらに、2つの固有値のパラメータを含む非線形Sturm-Liouvill問題について、2つの非線形項が相異なるpベキ、qベキのとき、1つのパラメータを他方のパラメータの関数として表すことが、変分法を用いると可能であることが示された。その上で、1つのパラメータが無限大に増大したときの他方のパラメータの漸近挙動の公式を得る事ができた。この結果はさらに一般の2つの非線形項を含む2パラメータの方程式に適用でき、同様の結果を得ることが出来た。この結果は、特に、q=1ならば、一般次元の球領域で考えた球対称解に関しても、同じような問題設定の上で、同様な結果を得ることができた。
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