研究概要 |
自己相似集合上のラプラシアンの固有値分布及び固有関数について研究を行った。 I.局所化された固有関数の存在と自己相似集合の対称変換群 自己相似集合に対してその"対称変換"という概念を確立した。さらに対称変換のなす群の性質と、ラプラシアンの局所化された固有関数の存在の関係を明らかにした。主要な結果の概略は「自己相似集合が2つの異なる種類の対称性を持てば、そのうえラプラシアンは局所化された固有関数を持つ。」というものである。"2つの異なる種類の対称性"とはたとえば正5角形を境界とする自己相似集合の場合は、重心のまわりの回転と重心と一つの頂点を結ぶ直線に対する対称移動である。 II.局所化された固有関数の存在と状態密度関数 これまでの研究により自己相似集合上のラプラシアンで格子条件をみたさない場合は状態密度関数(固有値のカウンテング関数をスケーリングしたもの)は定数となることが証明されていた。この研究では格子条件をみたす場合に、局所化された固有関数が存在することと、状態密度関数が不連続点を持つことが同値であることを示した。 III.Nested fractal上のラプラシアンについて 上記I,IIの成果をNested fractal上にリンドストルムによって定義されたラプラシアンに対して応用した。すなはちNested fractalの対称変換群が十分大きいことを示してIの結果を使い、局所化された固有関数の存在を示した。さらにIIの結果によって状態密度関数が不連続点を持つことを明らかにした。
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