次のような研究を行った。 (1)無限に拡がる格子上の無限個の粒子から成る系の定常分布を、これと“dual"な関係にある有限個の粒子から成る系を扱うことによって調べることができる場合がある。我々はGrayによってgraphical representationと呼ばれる方法で導入された、拡張されたdualityを別の方法によって再定式化した。これを応用して、拡張されたcontact processなどいくつかのモデルの臨界値を調べた。 (2)クラスター間にランダムな競合があるようなdirected percolationを、計算機シミュレーションによって調べた。このような系は、臨界点においてself-affine性をもち、結晶成長系に対して提唱されていたMatsushita-Meakinのスケーリングが成立することが明かとなった。(磯上、松下両氏との共同研究。) (3)拡散を伴ったcontact processは、移住の効果も取り入れた伝染病伝播のモデルである。伝染病蔓延⇔撲滅の非平衡相転移の臨界値が、拡散率(移住の速さ)Dにどのように依存するかが問題となる。我々は、空間次元d【greater than or equal】3の場合に、臨界点の上限・下限を与えた。これにより、D→∞やd→∞で、平均場極限にどのように近づくかが明らかになった。crossover現象につ (4)非平衡臨界現象が見られるとき、その臨界値や臨界指数は、モデルの時間発展を与えるtransition matrixの固有値の、システムサイズL→∞での漸近形によって定められると考えられる。我々は、coalescing dualという関係にある2つのプロセスは、(各々のパラメーターの間にある関係が成り立つと)transition matrix自体は全く異なっていても、その固有値は任意のLにおいて総て等しくなることを証明した。このことは、coalescing dualの関係にあるプロセスは同じuniversality classに属することを示唆する。(乾、宇沢両氏との共同研究)。
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