当初の計画にしたがい、まず、散乱電子用高分解能エネルギー分析器、および出入り口のレンズ系の設計を行い、エネルギー分析器用のビン電源(申請設備の一部)を設備備品費により購入した。同時に、現有設備であった電子衝突飛行時間型質量分析器の分解能の向上のために、高速前置増幅器一式を設備備品費により購入した。この結果、飛行時間を並進運動エネルギーに変換した場合のエネルギー分解能は向上し、数十meVのエネルギー分解能(水素原子イオンにおいて)を実現させた。 続いて、校費および科研費の消耗品費によりステンレス鋼材と真空部品を購入し、エネルギー分析器および、出入り口のレンズ系の製作を行い、真空槽内に収納した。 その後、水素、メタン、メタンd4を用いて、解離水素イオンの並進運動エネルギー分布の測定を行った。一方で、散乱電子の検出についての予備実験を行い、これに成功した。現在、同時測定時に問題となる信号数の減少に対処するために、検出システムの改良を行っている。これまでに、メタンの超励起状態から解離する水素原子イオンが大きな運動エネルギーを有している事が確認され、これが超励起状態を経由する事とどのように関連しているかを解析中である。結果の一部は、日本物理学会秋の分科会(静岡大学)、およびAtomic Collision Research in Japan誌上で、既に報告されている。また、最新の解析結果を来る3月に行われる日本物理学会年会(神奈川大学)で発表する。また、来る7月にカナダで開催される国際会議(ICPEAC)でもさらに解析を進めた上で発表する予定となっており、メタンおよびメタンd4の結果をまとめて論文にすべく、準備中である。
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