研究概要 |
湯谷観測井の精密水温測定は、今までは湧出口付近で行なっているだけだったので,地下水が混入している,深さ25m付近に精密水温計(分解能0.001℃)を新たに設置した。1994年12月28日の三陸はるか沖地震(M7.5)と1995年1月17日兵庫県南部地震(M7.2)の2つの地震に対し、25m深度水温は、湧出口水温と同様に顕著なコサイスミック変化を示し、地下水が混入している部分でも水温がコサイスミックに変化していることが判明した。 また、北海道周辺では、1993〜1994年に北海道東方沖地震を含む3つのM8クラスの地震が発生したが(湯谷ではいずれも無感)、湯谷からみてほぼ同方向・同距離の地震であるにもかかわらず、釧路沖地震でのみ湯谷での(湧出口での)水温変化が認められなかった(図)。地震断層面での滑りからもたらされる湯谷における体積歪変化の差はあまりなかったが、京都大学の鳥取観測所や松代市の気象庁地震観測所における超高性能地震計の波形記録から、釧路沖地震が他の2つの地震に比べて表面波の振幅がかなり小さいことが判明した。このことから、表面波による歪の伝播または励起が、湯谷温泉の水温変化のメカニズムに大きく寄与していると推定できる。 今後、湯谷での水温変化を引き起こす表面波の波長や振動方向の特長を見いだし、湯谷温泉周辺の地質構造等との関連を明らかにすることが必要である。
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