本年度は高リュードベルグ電子状態にある分子の寿命について情報を得ることを目的に、実験を行なった。原子の場合、リュードベルグ状態の寿命は、主量子数nの3乗に比例して長くなることが知られているが、今回実験を行なったNO分子などの場合、分子の解離エネルギーがイオン化エネルギーよりも小さいため、原子とは異なるダイナミクスが観測される。具体的には6.5eVの解離エネルギーを持つNO分子の9.2eV付近の状態を観測した場合、前期解離過程により、特定のリュードベルグ系列(p系列)は消失し、一部のリュードベルグ系列(f系列)が主に観測された。これは、リュードベルグ系列の対称性によって、前期解離過程の効率が異なっていることを示している。リュードベルグ分子を長寿命分子種としてエネルギー蓄積に利用する際には、このような解離過程をいかに回避してエネルギーを供給できるかが実現への大きな問題点となることが明らかになった。f系列のように軌道角運動量の大きなnon-penetratingなリュードベルグ状態は前期解離が起こりにくいため、こうした状態をどれだけ効率良く生成することが出来るかが今後の研究課題となる。
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