研究概要 |
1)14族元素水素化物の電解還元 これまでトリフェニルゲルマンを電解還元することによってトリフェニルゲルミル陰イオンが生成することをNMR測定により確認していた.今回さらにジフェニルメチルゲルマンならびにフェニルジメチルゲルマンの電解還元を行い相当する陰イオンの生成をNMR測定により確認した.この結果を基に,電解生成陰イオンの置換基効果さらに,従来の典型的なゲルミル陰イオンであるゲルミルリチウム化合物とのNMRスペクトルの比較を行った.その結果,ゲルミル陰イオンのフェニル基の数が減少するに従い,フェニル基のイプソ位炭素が低磁場シフトし,パラ位の炭素は高磁場シフトしていることが明らかとなった.また電解生成陰イオンは,相当するゲルミルリチウムよりそのシフト差が大きいことより,電解生成陰イオンのゲルマニウム原子上には,より多くの負電荷が局在していると考えられる.以上の結果は,Denki Kagaku,12月号に掲載予定である. 2)電解生成陰イオンの付加反応 電解生成陰イオンのフェニルアセチレンならびに4-t-ブチルシクロヘキサノンへの付加反応を行い,その生成物の立体化学をゲルミルリチウムとの反応と比較した. フェニルアセチレンとゲルミル陰イオンとの反応ではゲルミル基が付加したcisならびにtransエチレン誘導体が生成した.またその生成比は,電解生成陰イオンの反応では,cis体が多く生成しゲルミルリチウムとの反応では逆にtrans体が優先的に生成した. 一方4-t-ブチルシクロヘキサノンとの反応では,同様にゲルミル基が付加したシクロヘキサノール誘導体が生成し,その立体化学は電解生成陰イオンとゲルミルリチウムとでは大きく逆転することが明らかとなった.
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