本研究の目的は非マメ科植物の根圏における窒素固定活性を測定し、窒素固定菌と非マメ科植物とのゆるい共生系を探索することにあった。 まず、購入したFID付きガスクロマトグラフを用いて、草本を中心に植物を根圏の土も含めて丸ごとセパラブルフラスコに入れてアセチレンを添加する方法によって、アセチレン還元活性を調べた。丸ごと測定できない場合には、根圏の土だけを採集し、ガラスバイアルに入れてアセチレン還元活性を測定した。 調査を進めるうち、ユキノシタの根圏において、比較的高い窒素固定活性(0.8〜5μmol/dry weight・h)が見られたので、予定通り、ユキノシタの根圏から窒素固定菌を単離することを試みた。この作業を始めたため、探索の方は15科48種に留まった。ユキノシタ以外には特に注目すべき活性を示す植物は発見できなかったが、ケカモノハシの根圏土壌に糖類を添加して測定するとやや高い活性を示すことから、窒素固定能力のある微生物がケカモノハシ根圏に存在するものの、自然状態では炭素源が限定要因となってほとんど活性を示していないのではないかと考えられる。 ユキノシタから単離した菌は、無窒素の培地中でも良く成育し、また、その培地中でもアセチレン還元活性を示した。この菌はサッカロース、マニトールの入った培地で良く増え、ラクトース、マロン酸、クレン酸も利用することが出来るが、プロピオン酸、安息香酸は利用できないことが分かった。 以上の結果から、ユキノシタの根圏において窒素固定菌とのゆるい共生系が成立している可能性が考えられるが、この関係がゆるい共生系であると言うためには、今後、菌の同定をし、更に、ユキノシタにとっての共生相手が、この菌でなければ成立しないのか、窒素固定菌ならある程度広い範囲で成立しうる系なのかと言ったことについて、実験を進めて行く必要があると考えている。
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