溶原性ファージφUは、クローバ根粒菌4S株に感染し、ファージDNA上のattPと4S株染色体上のattB間で特異的組換えを起こし、菌染色体にインテグレートすることで溶原化する。本研究では、4S株染色体上のattBをクローニングすることを目的とした。併せて、ファージφUと宿主菌株について、レトロン存在の可能性を検討した。 1.根粒菌染色体のattBのクローニング クローバ根粒菌CI101株は、ファージφUのattPを保持するプラスミドpCI6を4S株のattBにインテグレートさせた菌株である。CI101株の全DNAの制限酵素断片に対してattPをプローブとしたサザン法を行うことにより、attPとattBの組換えによって生じるファージと菌染色体のキメラ断片であるattLとattRを検出可能であった。CI101株のジーンバンクの中から、attPをプローブとしてスク-ニングし、attLに相当する約4kbのPstI断片を得た。次に、このattL断片をプローブとして、4S株のジーンバンクをスクリーニングすることにより、attBが存在すると予想される2kbのPstI断片を得ることに成功した。現在、attP、attB、attLの塩基配列の解析を進めている。 2.レトロンの探索 根粒菌4S株及びその派生株について、マルチコピーシングルストランドDNA(msDNA)の存在を指標として、レトロンの検出を試みたが、いずれの菌株からもレトロンを検出することはできなかった。また、一部明らかになっているファージφUDNAの塩基配列のなかに、レトロンの機能と関係深い逆転写酵素の共通配列(12塩基)と相同性の高い配列が存在したものの、それを含むオープンリーディングフレーム、あるいはレトロンの構造を取り得る配列は見いだせず、本研究に使用した菌株では、レトロンの存在は明確にできないことが判明した。
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