まず、単離同定された雄イモリ肛門腺腹腺由来の雌誘引ペプチド(ソデフリン)を化学合成し、その雌誘引活性を調べたところ、内因性のものと同様、濃度依存的に雌誘引活性を持ち、その最小有効濃度は10^<-13>M〜10^<-12>Mであることが確かめられた。次に、この合成ペプチドのC末端にシステインを付け、ヘモシアニンをコンジュゲートしたものを抗原に用いてウサギでポリクローナル抗体を作成した。この抗体を用いて免疫組織学的に肛門腺腹腺を染色したところ、上皮細胞の内腔に面した側に強い免疫陽性反応が見られた。このことからソデフリンは肛門腺腹腺より分泌されることが確認された。一方、ソデフリンに対する雌の嗜好性は、雌の鼻腔内に綿球を詰めたり、あるいは嗅神経を切断するなどの嗅覚阻害を行うと消失した。このように、ソデフリンに対する雌の嗜好性は嗅覚を介して発現されることを示唆する結果が得られた。そこで、ソデフリン刺激により、イモリの嗅上皮に電気的反応(嗅電図)が発生するかどうかを調べた。その結果、プロラクチンやゴナドトロピンなどのホルモン処理により性的に活性化された雌イモリの嗅上皮からは、同様のホルモン処理をうけた雄イモリや、未処理の雌イモリに比べ顕著な応答がソデフリンの濃度に依存して生じることがわかった。その閾値濃度は10^<-13>Mであり、雌を誘引する最小濃度と一致した。現在、上記の研究成果に基づき、ソデフリンの生産部位の特定や、生産の調節、受容のメカニズムの解明を目的として研究を進めている。
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