研究概要 |
本研究は、与えられた境界条件下における変形後形状から初期形状を決定する新しい大変形問題における形状決定手法の定式化と計算手法を提案するものである。本年度は,以下のように研究を行った. 1.超弾性体の大変形問題を、Total Lagrange型変形記述に基付く変分法的定式化により変分問題として記述した。この変分問題に対して、Total Lagrange型変形記述に基づくALE(Arbitrary Lagrangian-Eulerian)法を導入することにより、大変形を考慮した形状決定問題を、初期形状と変形後の形状の両方を未知数として、変形写像によって関連づけられるそれらの対を見いだす問題として定式化を行なった。 2.この定式化を、ゴム材料などで現われる非圧縮超弾性体の2次元問題に適用し、有限要素法を用いた数値解析手法を開発した。問題は非線形であることから、初期形状と変形後の形状の両方に対する摂動を考え、問題の線形化を行ない、Newton-Raphson法を適用した。 3.開発された初期形状決定手法のプログラムを開発し、そのプログラムを用いて、数値実験を行い、手法の有効性と得られた解の挙動について検討を行なった。その結果、変形後形状に対する境界条件が変形量によって与えられる問題に対しては、与えられた変形後形状,境界条件に対応する初期形状を通常の大変形解析と同様なプロセスによって求めることができることが明かとなった。一方、荷重によって境界条件を与える場合には、求められた初期形状は、その初期形状に対して境界条件を与えることによって得られる変形後形状が、形状決定解析において与えた変形後形状とは一致しない場合があることが分かった。これは、本形状決定手法においては、釣り合い経路を考慮されていないためであるためであり、今後このような問題に対しては計算手法の改良が必要であることが分かった。
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