研究概要 |
ウサギの膝蓋骨にステンレス鋼製のピンあるいは高剛性の高分子繊維を取り付け,これを油圧サーボアクチュエータに接続し,麻酔下で1日に1回,2週間,所定の繰り返し負荷を体外から強制的に膝蓋腱に作用させた.最大荷重は100N,150N,200N,最小荷重は10N,繰り返し周波数は4Hz,繰り返し数は3000である.所定の繰り返し負荷を作用させた後,ウサギを屠殺し,膝関節から膝蓋骨-膝蓋腱-脛骨複合体を取り出し,膝蓋骨と脛骨をアルミニウム製のカップの中にレジンで固定し,引張試験機に取り付けた.試験では37℃の生理食塩水中で,引張速度20mm/minで行った.ひずみは膝蓋腱の表面に染料(ニグロシン)で描いたマーカー間の距離をVideo dimension analyzerで計測することにより求めた. 最大負荷100N,150Nの繰り返し負荷により,膝蓋腱の引張強度は減少したが,断面積が増大したので,腱全体の強度(最大荷重)に有意な変化は現れなかった.一方,最大荷重200Nの繰り返し負荷でも,引張強度は減少し、断面積は増大したが,引張強度の減少が著しいため,最大荷重は有意に減少した.通常の運動中に膝蓋腱に生体内で作用する張力のピーク値は約83Nである.このことから,膝蓋腱は通常作用する負荷の2倍以下の過負荷に対しては正常に適応できることが明らかになった.
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