高精度加工を実現するためには、工作機械の運動機能を計算機で表現し、加工運動シミュレーション、解析などを行い補正することが必要となる。しかし、実際に計算機を用いて加工運動シミュレーション等を行うには、工作機械の構造などの計算機表現が十分でなく、加工運動シミュレーションや補正法などなされていない。その理由としては、工作機械の構造と運動を表すためには、リンク構造間の相対運動をマトリクス表現で表す方法では、人間が概念的に理解する為、及び計算機により工作機械の運動シミュレーションを行う上で適切な形式ではない、が挙げられる。本研究は、工作機械の構造と運動を、工作機械の各構成要素の構造や構成要素間の運動を詳述する情報モデルとして表現しそれを用いて工作機械における計算機支援システムを実現することを目的としている。 上記の目的で研究を行ない、以下の結論を得た。 1)工作機械の運動モデルの理論の調査、検討 工作機械の運動モデルについて、従来研究の調査により工作機械の運動モデルとして表現すべき情報は、リンク間の相対運動及び運動座標系間の一つのリンク上における位置関係である。この観点から、座標系の設定法として、形状創成関数、D-H記法、S-U記法を比較し、本研究ではS-U記法が適していることがわかった。 2)オブジェクト指向言語による工作機械の運動モデルの情報モデル表現法に関する検討 上述した手順により求められた運動モデル表現のための情報を用いて、工作機械の運動モデルを記述した。その際、モデル記述言語としてオブジェクト指向言語であるEXPRESS言語と、図式表記法としてEXPRESS-Gを用いる。このモデルは、ISO10303:Part105Kinematicsで記述されている構造を基にしている。 3)工作機械の運動モデルを用いたシミュレーションシステムの試作及び評価 上述したEXPRESS言語による工作機械の運動モデルの情報モデル表現を用いて、工作機械の運動シミュレーションシステムをパーソナルコンピュータ上で実現した。また、実現したシミュレーションシステムを用いて、工作機械の運動モデルとしての機能が十分であること、及びシミュレーションシステム実現の容易性が確認できた。
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