高温に加熱した金属細線を水槽中に浸漬急冷すると、その高温細線と水中に設けた同じ材質の電極との間に電流が発生することを見いだした。これが熱電現象によることを確認し、その特性を明らかにするため以下の実験を行った。 (1)水平部長さ80mm、鉛直部長さ80mmのU字型に保った直径0.5mmの白金線を通電加熱した後、一定速度で水槽内へ落下し急冷した。その際、供試金属線に電流を流し、水平部の中央に約25mm間隔でスポット溶接した電圧タップ間の電圧降下を測定し、比抵抗と温度の関係より白金線の表面温度の時間変化を求めた。 (2)発生電流測定のためファンクションジェネレータ、抵抗器および白金電極より電気回路を構成し、供試白金線の中央部と直列に連結した。供試白金線の鉛直部およびタップは石英ガラス管により周囲の水と電気的に絶縁した。供試白金線と電極との間にファンクションジェネレータを用いて±5V、2.5kHzの矩形状の交番電圧を印加し、アナライジングレコーダに記録した抵抗器での電圧変化を処理することにより発生電流と直流電圧成分による電流とを分離した。 実験結果は以下の通りである。 (1)非加熱白金線の場合、交番電圧を印加しない場合、および白金線温度測定用の電流を流さない場合との比較実験により、この現象が何らかの熱電現象であることを確認した。 (2)発生電流は外部回路を水中電極から高温白金線へ(水中を白金線から電極へ)流れる。 (3)発生起電力の推算値は白金線温度とともに増大し、約700℃で最大値に達するが、これは電圧タップの影響を無視したことが原因と推測され、起電力は白金線温度とともに増加すると考えられる。 (4)起電力の最大値は約20Vに達する。 (5)白金の代わりにパラジウムを用いた実験でも同様の発生電流が観察された。
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