研究概要 |
本科学研究費補助金により,直径0.2μm,長さ10μmの針状の磁性体が膜面に垂直に無数に並び,膜面に垂直方向に磁界を印加した場合の保磁力が56.25Oe,印加磁界0.5kOeの時に飽和磁化の80%にまで達する垂直磁気異方性を有する組成Fe_5Co_<83>P_<12>のCo基アモルファス磁気繊毛皮膜を作製した.以下にその概要を述べる. ・ポア中への磁性体の析出に,従来の交流電解析出を用いた場合,析出の進行と共に,析出駆動源であるポアの底のバリア層のコンデンサ作用が低下し,ポア中に析出する磁性体の長さは3μm程度で飽和し,反磁界を低減するのに十分なアスペクト比が得られなかった.そこで,本研究では,ポアの底のバリア層を除去し,ポアを酸化アルミニウム皮膜の下地アルミニウムまで貫通し,直流電解により,直接,下地アルミニウムへ磁性体を析出した.これにより,高アスペクト比(50)の実現はもとより交流電解析出では困難であったFeCoPのアモルファス合金のポア中への析出が可能となった. ・直流電解析出の際の電析浴pH及び電流密度が,膜面に垂直方向に磁界を加えた場合の保磁力に及ぼす影響を検討した結果,両者を低下させるとともに,保磁力が減少することがわかった.さらに,EPMAにより,ポア中の針状磁性体の組成を分析した結果,直流電解析出の際の電析浴pH及び電流密度を低下させると,針状磁性体中のリンが増加していることから,両者を低下させると,非晶質化のためのメタロイド供給源であるリンが増加し,保磁力が減少したことがわかった. ・SEMにより,直流電解析出の時間を変えた場合のポア中の磁性体を観察した結果,時間が経過するとともに,下地のアルミニウムの膜面に垂直に針状の析出物が成長していることが観察された.また,その際の磁化曲線の傾きは,析出物の長さが長くなるにつれて,反磁界の影響が低減され,大きくなることがわかった.
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