研究概要 |
本研究では申請者が提案してきた,偏光変調/コヒーレント光検波方の空間整合量からビーム到来角を推定し、通常の光検波器を使用できるという特長をもつコヒーレント光ビーム追尾原理を基にして、宇宙通信系に特有な背景光雑音、ドップラシフトや偏光軸不整合、ビーム到来角ゆらぎなどの妨害要因を考慮して最適コヒーレント光変復調・空間追尾方式について理論的に検討した。その結果、以下の成果が得られた。 衛星間光伝送路のモデル化として、背景雑音光などの諸雑音要因の統計モデル化と衛星の軌道計算をもとにした衛星の相対運動シミュレーションを実行し、ドップラーシフトの理論モデルと衛星の機械的振動,雑音による変動も加味した光ビームの到来方向変動モデルを構築した. 次に、これらのモデルを用いて,偏光変調/光コヒーレント検波方式に対するドップラーシフトの影響を理論的に明らかにし,周波数に対する要求追尾精度を明らかにした。そして、ドップラシフトに対して簡単な構成のフィードフォワード局部発振光周波数制御システムの提案を行い、理論的にその適用効果を明らかにした。また、新たな偏光を積極的に利用するコヒーレント光変復調方式として直交多値偏光間周波数シフトキ-イング方式を提案し、その適用効果を理論的に明らかにした。その結果、本提案方式は、レーザーの位相雑音が大きいときには従来の多値FSK方式に比べ少ない伝送帯域出受信感度改善が図れる、宇宇宙光通信に適した方式であることが明らかとなった。 さらに、光ビーム追尾方式については、円形が普通であるアンテナの開口形状や半導体レーザ光の現実の空間強度分布を考慮して、提案している光ビーム追尾原理を用いつつ、実現化の容易な局発光回析像シフト方式と複数局発光方式を提案し、その追尾性能について理論的な解析を行った。その結果、本提案方式は簡単な構成でありながら、理論的限界に追尾性能が迫る優れた方式であることが判明した。 以上の成果については、国際会議、電子情報通信学会研究会などで口頭発表を行っている。
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