本研究は、低圧実験により水面から大深度にわたる現象をシミュレートし、その上で、大深度水深における気泡噴流の組織的乱流運動を把握することを目的としている。今年度において得られた成果と知見をまとめると以下のようである。 1.当初、研究対象としていた気泡噴流はいわゆる自由流の一種であり、その実験には、壁の影響が現れないような広い水槽が必要となる。しかし、低圧実験に耐え得る強固な水槽を製作しようとすると、今回の予算ではさほど大きなものは困難であることがわかった。そこで、予定を変更して、小さな水槽でも実験が可能なように、実験対象を、鉛直管内に気泡を放出するエアリフトに変更した。そして、大水深にわたる水圧変化による流動形態の変化を捉えることにした。 2.エアリフトに対する低圧実験は、現段階では1m水深の水槽で2m相当の現象が再現できるまでになっている。今後、空気漏れや気泡の発生方法を工夫することにより、さらに大きな水深をシミュレートできる見込みである(真空ポンプの性能からは100m相当のシミュレートが可能)。 3.気泡噴流そのものについては、20m〜50mにわたる水深での計測結果も踏まえて、どのような物理スケールが支配的なのか検討を加えた。その結果、一様密度水域では、水深、空気量、気泡の上昇速度などを用いた単純なパラメーターを用いて、気泡噴流における水の上昇流量の算定式を導くことができた。さらに、直線成層中での実験・観測結果を解析して、一様密度水域での上昇流量を、成層の強さに応じて補正する算定式を導いた。
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