本研究は、低水温期の付着微生膜処理における新しい処理法の開発を目指している。この処理法では、加温担体表面に付着した微生物膜によって、低水温原水中から汚濁物質除去を行わせると言うものであるが、加温担体表面を低温水が層流で流れる場合、担体表面近傍には微生物の増殖が可能と考えられる微視的保温領域が形成され、そこでは実際に微生物膜の形成が起こることがわかっている。しかしながら、担体表面に微生物膜が形成されていく過程で、微生物膜内の温度分布がどうなっており、これが微生物膜の形成にどのような影響を及ぼすのかという点についてはまだわかっていないのが現状である。そこで、今回の研究では、加温担体表面上に形成された微生物膜内の温度分布とこれが微生物膜の形成に及ぼす影響の検討を行った。 加温ケーブルを巻き付けた円管内に低温汚濁水を連続的に通水して、円管内壁に微生物膜を形成させる実験を行い、微生物膜形成の過程を調べるとともに、円管内層流熱伝達理論を用いた解析を行うことにより微生物膜内の温度分布を求め、微生物膜形成との関係を検討した。 その結果、円管内に微生物膜が付着した状態でも円管内層流熱伝達理論が適用できることが示され、これを用いて微生物膜表面温度が計算で求めることができた。また、微生物膜表面と円管内壁面とでは、ほとんど温度差が無く、微生物膜内はほぼ一定温度で保たれていること、微生物膜の形成によって、円管内壁面温度が若干高めに保たれることが示された。従って、これらが効果的に働き、微生物膜の形成が促進される可能性が示唆された。
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