平成6年の4月から11月にかけては、主として以下の2項目について作業を進めた。 1.平成5年度までに現地調査により入手した実測データを用いて、アユタヤ期のヴィハン建築の詳細な平面図を3遺構について作成した。 (1)ワット・マハタート (2)ワット・ラ-チャブラナ (3)ワット・タミカラート 2.新たに入手した文献資料(タイ語)の読解。 (1)「シム・イサーン」(タイ東北部のヴィハン、ボ-ト建築に関する調査報告書) (2)「ヴィアン・クムカ-ム」(タイ北部の古代都市に関する史的考察) 知人を通じて、アユタヤ期のヴィハン、ボ-ト建築について扱った報告書、研究論文の入手を試みたが、こちらが期待するような資料は存在しないということであった。したがって、やはり自らの手による現地調査から得られるデータを用いて研究を進めるのが最も有効な手段であることを再確認した。 12月からは、作成した実測図を用いて平面の寸法計画を主体とした設計方法の分析を進めている。アユタヤ期のヴィハン、ボ-ト建築は、規模が巨大化し、壁構造化が認められるが、スコータイ期のヴィハンやボ-ト同様、柱真に計画基準線が設定されていた可能性が指摘できる。しかし、3遺構では資料が十分とはいえず、再度現地調査を実施して、他の遺構の寸法データを入手する必要性を感じている。
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