(1)高真空中で破断した正常なガラス表面に単色Al-Kα X線を照射してX線光電子スペクトル(XPS)の測定を行った。測定中は資料表面に低エネルギーの電子シャワーを照射し、さらに試料表面の約1mm上方にNi金属メッシュを置くことで、均一な帯電中和補正が可能となった。その結果、石英ガラスの酸素およびケイ素の内殻準位について、従来の報告例に比較して半価幅の小さい非常にシャープなピークを得ることに成功した。 (2)次に、2成分系アルカリケイ酸塩ガラスのXPSスペクトルの測定を行った。その結果、Olsスペクトルを架橋酸素と非架橋酸素に帰属される明瞭な2つのピークに分離できた。さらに、Ols結合エネルギーはアルカリ酸化物の含有量が増すほど、また同じアルカリ含有量ではアルカリ種がLi、Na、Kの順に低エネルギー側にシフトすることを見出した。また、陽イオンの内殻準位の結合エネルギーもOlsと同様に僅かなシフトを示すことを確認した。このシフト量は陽イオン、陰イオン間の相対的な塩基度に支配されていると結論付けた。 (3)価電子帯近傍のXPSスペクトルについても従来にない鮮明なスペクトルを得ることに成功した。DV-Xα法を用いた分子軌道計算(新規備品)により求めた状態密度は実測のXPSスペクトルと非常に良く対応していた。 (4)本研究で得られたXPSスペクトルをデータベースとして公開するために、測定データの書式について検討するとともに、学内LAN上でのデータ転送試験を行った。
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