研究概要 |
1.アルミニウムは不活性であるため6-R-1,3,5-トリアジン-2,4-ジチオール(RTD)ナトリウム塩水溶液の浸漬処理方法ではアルミニウム表面にRTD被膜を形成し、異種材料との接着性、濡れ性を改善することはできない。そこで新規処理方法として電解重合法を用いてRTD処理することによって接着性官能基を有するRTD被膜をアルミニウム表面に形成する条件を検討した。RTD処理アルミニウムの化学的性質、物理的性質を評価し、ポリエチレンとの接着剤を用いない直接溶融接着を検討した。 2.種々のRTDナトリウム塩をメタノールまたは水に溶解し電解液として調整した。電解槽中に脱脂したアルミニウムを作用極、対極をSUS304をセットして定電流法によってアルミニウム表面にRTD電解重合膜を形成した。処理アルミニウムはFT-IRによって被膜の形成状態、GPCによって重合状態を検討した。処理アルミニウムはホットプレート上で加熱しポリエンチレンを溶融接着し、接着強度を引張試験で評価した。剥離表面はSEMによって状態観察した。 3.RTDの種類としてはRがジブチルアミン(DB),アニリン(AF),不飽和基を有するジアリルアミン(DA)を用いて電解重合を行った結果、定電流法で電流密度0.2mA/cm^2、時間3minで処理することによって、FT-IRでは,アルミニウム表面に形成した電解重合被膜がRTDの赤外スペクトルを示すことが確認された。RTD被膜を有機溶剤で溶解しGPCによって重合度を調べた結果、高分子量であることが確認された。水に対する接触角測定した結果では未処理のアルミニウムは72°であったがDA処理したアルミニウムでは57°と低下し、濡れ性が改善された。DA処理アルミニウムをホットプレート上で200℃加熱しポリエチレンと溶融接着した結果、未処理アルミニウムは引張強度が0gf/cmで剥離したが、DA処理アルミニウムでは150gf/cmの強度の接着力を得た。アルミニウム表面をSEM観察するとポリエチレンの結晶が確認され、ポリエチレン層間の破壊によって剥離するほどの接着強度を得ることができた。 4.本研究はRTD溶液で電解重合処理するによってアルミニウム表面にRTD接着性官能基を付与することができ、ポリエチレンと複合化を容易にした。この新規表面処理法を開発したことで表面処理及び複合材料分野にとってはできわめて重要な萌芽的研究であったと考えられる。
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