チタン酸バリウム焼結体の結晶粒成長に関し以下の点について新たな知見を得ることができた。 (1) 0.1mo1%レベルの過剰Ti組成では、結晶粒成長はある温度以上において異常粒成長を生じる。そして、この異常粒成長温度は、過剰Ti量が増加するにしたがって低温側へと移動する。従って、異常粒成長を避けるためには、できるだけ過剰Ti量を少なくしなければならない。さらに、この組成範囲では異常粒成長温度以下では、結晶粒成長の増大が全く生じなかった。 (2) 0.1mo1%レベルでのBa過剰領域では、連続粒成長を示す。同組成範囲では、本研究で使用した熱処理温度の範囲内(1250〜1380℃)では、整粒組織が得られた。 (3) 焼結体の密度は、化学量論組成および若干のTi過剰組成において最も高くなる傾向を示した。しかしながら、整粒組織が得られたBa過剰組成範囲では低い焼結密度となった。これは、Ba過剰試料では、焼結とともに進行する結晶粒成長の増大によって、残留ポアが結晶粒内に取り込まれるために生じるものであると考えられる。 チタン酸バリウム焼結体の結晶粒成長は、従来考えられていた以上に非化学量論性の影響を強く受けることが判明した。この実験事実は、新たなものであり、今後の焼結体の特性などを考慮する上で極めて価値のある結果と考えられる。 以上の結果を踏まえ、焼結法から単結晶を作製するには若干のTi過剰組成が最適である事を突き止めた。すなわち、単結晶作製の際に重要である結晶粒の成長に関しては、異常粒成長が生じることが必要である。これらの結果については、研究実績として、2報の論文に取りまとめている。
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