酸性雨による森林破壊を引き起こす大気中の硫黄酸化物の大部分は、石油・石炭などの化石燃料に含まれる有機硫黄化合物に起因している。ジベンゾチオフェン(DBT)類は軽油留分中に多く含まれ、従来の水素化脱硫法では脱硫が困難であった。本研究では、軽油と水の二相系に紫外光を照射し、有機相中のDBTを光反応させ水相中に抽出除去するプロセスについて検討した。 軽油に模したテトラデカン(n-C_<14>H_<30>)にDBTを溶かし2g/lとした。水相には蒸留水またはNaOH水溶液を用いた。高圧水銀灯を試料溶液(有機相50ml・水相200ml)に挿入し、撹拌しながら光照射した。 有機相中のDBT濃度の経時変化をガスクロマトグラフにて分析した結果、水相に蒸留水とNaOH水溶液のいずれを用いてもDBT濃度は光照射時間とともに減少することが分かった。また、光照射時に空気を吸い込むことによって、DBT濃度の減少速度を大幅に早めることができた。蒸留水を用いた場合、有機相との界面にエマルション相が生成し、有機相の回収率が70%程度となった。NaOH水溶液を用いた場合はエマルションは生成せず、98%以上の有機相を回収することができた。 水相中の硫黄濃度をICP発光分析法により分析した結果、有機相からDBTが減少していくのに従い水相中での硫黄分が増大し、有機相で減少したDBTの硫黄分のうち80〜95%が水相に移動していることが明らかとなった。水相を高速液体クロマトグラフ(逆相)で分析したが、DBTの単純な酸化物であるDBTスルホキシドやDBTスルホンは検出されなかった。光照射とともに水相pHが低下することから、水相中に酸性物質の生成が考えられ、イオンクロマトグラフによる分析から、硫酸イオンの生成が確認された。
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