研究概要 |
ファイバー状のβ-Ca(PO_3)_2結晶を析出させたリン酸カルシウム系ガラス結晶化体から、β-Ca(PO_3)_2結晶をβ-Ca(PO_3)_2結晶を抽出する方法を開発したことを先に報告した。このファイバーは、そのままで、新しい骨充填材として有望である。また、このファイバーを用いて多孔質材料を作成し、骨形成因子のような機能性タンパクや薬物を担持すれば、それらの徐放剤として機能した後生体内に吸収され、早期に新生骨の生成を誘導する、新しい生体材料への応用展開が期待できる。そこで、本研究では、抽出されたβ-Ca(PO_3)_2ファイバーを骨格とする多孔質体の合成とそのファイバーの表面改質を試みた。 これまでのファイバーの抽出条件を変え、β-Ca(PO_3)_2結晶の他に若干のCa_2P_6O_<17>結晶を含んだものを作製した。このファイバーを所定の型に入れ成形した後、770°〜800℃で5h焼成したところ、骨格の結晶がβ-Ca(PO_3)_2である多孔質体が得られた。Ca_2P_6O_<17>結晶は融解-ガラス化して、β-Ca(PO_3)_2結晶ファイバーを連結させるためのバインダーとしての役割を果たしていることがわかった。用いるファイバーの長さによって、気孔の大きさや気孔率を変化させる(40〜70%)ことができた。 上記のファイバーや多孔質体をカルシウム含有溶融塩(CaCl_2-Ca(NO_3)_2)に浸漬(420℃,30min)することにより、ファイバー表面をカルシウム成分に富む相に改質することが可能であることを見出した。多孔体の骨格は破壊されず形状を保持しており、表面にはスポジオサイト(Ca_2PO_4Cl)が生成していることがわかった。さらにこれを800℃で焼成すると塩素を含む水酸アパタイトに変化し、メタリン酸カルシウムとアパタイトからなる材料が得られた。水、疑似体液中に浸漬してもpHの低下はなく、良い生体親和性を示すものと期待される。
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