1.天然多糖であるキチンの水酸基を保護し、主鎖のみが選択的に切断される条件を検討した。その結果、保護基としてヘキサノイル基を導入し酢酸-塩酸混合水溶液中で撹拌することにより保護基がはずれることなく主鎖のみが選択的に切断されることが分かった。これにより両末端にのみ反応性のある水酸基を有するオリゴジヘキサノイルキチンが効率よく得られた。なお、分子量は数千であった。 2.得られたオリゴジヘキサノイルキチンの末端の反応性を検討した。イソシアン酸フェニルとの反応でウレタン結合の生成が確認され、イソシアン酸エステルと定量的に反応することが分かった。 3.そこでまず、オリゴジヘキサノイルキチンとジイソシアネートの反応を試みたところ分子量の増加が認められた。次にポリプロピレングリコールとのブロック共重合をジイソシアネートをカップリング剤に用いて行った。生成物の構造をNMRおよびIRにより解析したところ、ブロック共重合体が得られたことが分かった。 4.得られたブロック共重合体の脱保護(脱ヘキサノイル)を試みた。ナトリウムメトキシドのメタノール-ジメチルスルホキシド溶液中、室温で6時間撹拌し生成物を単離した。NMRおよびIRで解析したところ定量的に脱保護が進行し、オリゴキチンユニットとポリプロピレングリコールユニットを交互に有するブロック共重合体に変換されていることが分かった。 5.オリゴキチン-ポリプロピレングリコールブロック共重合体(天然類似複合多糖)のキチン分解酵素キチナーゼによる酵素分解性を検討した。その結果、ブロック共重合体のキチンユニット部分が酵素分解を受けることが確認された。
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