研究概要 |
本研究はペプチド基を含む両親媒性分子について、水中および有機溶媒中での規則構造(二分子膜構造)の形成を系統形に調べ、ペプチド特性と二分子膜特性の結合による新しい機能材料の開発を目的とした。まず、トリペプチドとしてGlu-Gly-Gly,Glu-Ala-Ala,Glu-Val-Val,Glu-Ile-Ile,Glu-Phe-Pheを含む5種類の両親媒性分子を合成し、水を含め13種類の有機溶媒中での二分子膜構造の形成を透過型電子顕微鏡観察によって調べた。その結果、用いたすべての両親媒性分子は、四塩化炭素,シクロヘキサン,ベンゼン,トルエンなど誘電率が2.02〜2.38の無極性溶媒中と水中で二分子膜構造を形成した。また、クロロホルムなどの極性溶媒も無極性溶媒の混合によって誘電率を低下させれば二分子膜構造を形成することがわかった。これは^1H-NMRスペクトルのピークのシフトとブロード化から確認したものである。以上の結果から、トリペプチド基を持つ両親媒性分子による有機溶媒中での二分子膜形成は一般的な現象であることが示された。次に、有機溶媒中での二分子膜形成の要因を調べるため、重水添加前後での^1H-NMRスペクトルを測定した。水素結合に関与するアミド基の^1Hは、膜構造が形成されている場合H-D交換が遅かった。従って、ペプチド間の多重水素結合が有機溶媒中の二分子膜形成を促進していることがわかった。このことは、ペプチド部分のβ-シート構造を強く示唆している。 本研究の一部は第43回高分子討論会において発表済みであると共に、第44回高分子学会年次大会において残る部分を発表予定である。また、重要な部分はChemistry Letter誌に投稿し現在印刷中(4号または5号に掲載予定)である。
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