研究概要 |
本研究では,岩石内部に既存するマイクロクラックを模擬した閉じたクラックをガラス板に導入し,これを繰り返し圧縮し,クラックの挙動の観察,ガラス板の変形率の測定,クラックからのAEの観察を行った。 なお,この試験に先立ち,閉じたクラックを導入したガラス板試験片の圧縮破壊過程の観察を行った。その結果,破壊過程は3段階に大別できることが認められた。第1段階では閉じたクラック面から数対の引張クラックが載荷軸方向に初生する。第2段階ではこれらのクラックが安定に成長するが,特に閉じたクラックの両端にある引張クラック(以下,ウイングクラック)の成長が速く,最終の第3段階ではこれが限界の長さに達して不安定破壊する。実際の岩石内部には,第1段階に達したクラック,第2段階に達したクラック及び全く引張クラックを持たない閉じたクラックの3種類が既存すると考えられるが,今回は,第2段階に達したクラックを対象に繰り返し圧縮試験を行った。得られた知見は以下のとうりである。 (1)第2段階を超える荷重で繰り返し圧縮した場合,ウイングクラックの成長が著しく,低繰り返し数で不安定破壊に至る。 (2)第2段階以下の十分小さな荷重で繰り返し圧縮した場合,引張クラック(ウイングクラックも含む)の成長は非常に遅く,数百回以上の繰り返しによりその成長を確認できた。その場合,ウイングクラックとそれ以外の引張クラックの成長速度の差は小さい。 (3)閉じたクラックの表面で発生するAEを観察することができた。AEの発生数は閉じたクラック面が粗い場合ほど高い。 (3)の知見は低応力レベルのAEのカイザー効果のメカニズムとも深く関係し,その一部を11にあげた講演にて発表した。また,圧縮破壊のメカニズムに関する考察をまとめるには,対象とするクラックの種類を変えて更に研究を続ける必要がある。
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