研究概要 |
1.ダイコンとキャベツの細胞融合により育成された細胞質雄性不稔植物のミトコンドリアDNAの解析 ダイコンとキャベツの細胞融合により作出された細胞質雄性不稔植物と、融合に用いた両親から全DNAを抽出し、数種類の適当な制限酵素で切断したのちアガロースゲル電気泳動し、ミトコンドリアDNA上の遺伝子をプローブにしてサザンハイブリダイゼイションを行うことにより、それぞれのミトコンドリアDNAの制限酵素切断パターンを比較解析した。その結果、5種類の遺伝子(atpA,atp6,coxII,26S,18S)について細胞質雄性不稔植物のミトコンドリアDNAの制限酵素切断パターンは両親のものと異なり、DNAが再編成されていることが示唆された。 2.細胞質雄性不稔植物のミトコンドリアDNA上の遺伝子発現の解析 ダイコン、キャベツ及び細胞質雄性不稔植物から全RNAを抽出し、1で変異の見られたミトコンドリアDNA上の遺伝子をプローブに用いてノーザンハイブリダイゼイションを行い、各遺伝子の転写物の大きさを比較解析した。その結果、26S rDNA,atpA,coxIIでは転写物の大きさに差異は見られなかった。またatp6遺伝子は発現量が低く、検出できなかった。 今後、遺伝子発現に変異の見られた遺伝子について、ダイコン、キャベツ、細胞質雄性不稔植物それぞれからクローニングし塩基配列を決定して比較することにより、DNAの再編成と遺伝子発現の変異との関連を解析する。 3.細胞質雄性不稔植物の葉緑体DNAに見られた変異の解析 1と同様にしてダイコン、キャベツ及び細胞質雄性不稔植物から全DNAを抽出し、葉緑体DNAのプロープを用いてサザンハイブリダイゼイションを行った結果、細胞質雄性不稔植物の葉緑体DNA上のrps16遺伝子付近にバンドパターンの変異が見られた。このバンドパターンは両親にみられないバンドパターンだったので、細胞融合により両親の葉緑体DNAが再編成した可能性が考えられる。今後、この変異の見られた領域をクローニングし塩基配列を決定して両親の塩基配列と比較することにより、どのような変異が起こったのかを詳細に解析する。
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