1.ジャガイモ塊茎のデンプン蓄積過程における糖代謝についての知見を得るため、酸化的ペントースリン酸回路の酵素である、グルコース-6ーリン酸デヒドロゲナーゼを組織化学的方法を用いて検出した。その結果、急速肥大期の塊茎では、皮層および周辺髄の組織で反応が強く、特に強い反応の細胞がモザイク状にみられた。中心髄では反応はやや弱かった。塊茎完成期の塊茎では、皮層および周辺髄の組織で急速肥大期に比べ反応はやや弱くなり、中心髄ではかなり弱かった。このように、急速肥大期にデンプン蓄積の盛んな皮層や髄で反応が強く、デンプン蓄積の終了する塊茎完成期には反応が弱まることは、急速肥大期にはプラスチドへの同化産物輸送に必要なトリオースリン酸の供給が盛んで、塊茎完成期にはこれが衰えることを示していると推定される。 2.ジャガイモ塊茎組織のデンプン蓄積とエネルギー生産との関係に関する知見を得るために、TCA回路の酵素である、リンゴ酸デヒドロゲナーゼの活性を組織化学的方法で検出した。その結果、急速肥大期の塊茎では、外皮層、外師部、維管束環および内師部のそれぞれの周辺で反応が強く、中心髄では反応が弱かった。塊茎完成期には外師部の周辺に弱い反応が認められるだけで、他の組織ではほとんど反応は認められなかった。これらの結果から、塊茎組織のリンゴ酸デヒドロゲナーゼ活性は、デンプン蓄積の盛んな急速肥大期の維管束周辺で高く、デンプン蓄積の終了した塊茎完成期の組織では低くなることが示され、細胞のデンプン蓄積とエネルギー供給との関係が示唆された。
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