研究概要 |
1.本研究では,まず,不伸長茎部下部の冠根原基形成部位および冠根原基について,水稲幼植物(苗)を用いて検討した.出現冠根数の少ない品種(コシヒカリ,アケノホシ)と多い品種(IR36,フジミノリ)の葉齢5.5前後の苗の不伸長茎部を,実体顕微鏡あるいはパラフィン法により切片を作製後,光学顕微鏡で観察した. (1)すべての個体の茎軸を“単位"によって分けることができた. (2)メソコチルから第3“単位"までの茎軸における冠根原基の数および出現した冠根の数は,出現冠根数の多い品種が少ない品種よりも有意に多かった. (3)鞘葉“単位"から第2“単位"までをとおした茎軸において,出現冠根数の多い品種と少ない品種で,辺周部維管束環(PV)の長さ,周囲長,側面積に差はなかった.しかし,PVの側面積に対して冠根原基数をとると,出現冠根数の多い品種は少ない品種に較べて,PV側面積が同じでも冠根原基数が多かった.また,PV側面積と冠根原基数との間に出現冠根数の多い品種と少ない品種でそれぞれ有意な正の相関関係が認められた. (4)以上より,水稲の不伸長茎部下部を“単位"によって分けられること,冠根原基の数はPVの大きさに左右されPV側面積が大きいほど多いこと,品種によりPVの冠根原基の形成能力には差異があり,出現冠根数の多い品種はPVの冠根原基の形成能力が高いことが示された. 2.以上の結果を踏まえ,現在,水稲の伸長茎部における冠根原基形成部位や水稲の分げつ茎における冠根原基の形成時期および形成部位,また,浮稲など他のイネ科作物の冠根原基の形成部位などの検討を行っている.
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