庭園空間の音環境に関する研究-對龍山荘の水音と環境音 對龍山荘庭園は明治時代後期に植治こと小川治兵衛によって改修・作庭された。本研究においては、環境音レベル等を記録・計測するとともに、造園技術における音の取り扱いを探ろうとするものである。 調査実施日及び調査内容 1994年8月24日:予備調査 11月2〜4日:庭園内環境音レベル分布調査及び環境騒音レベルの終日計測 主要水音のFFT分析及び主要環境音のDATによる採音 12月13〜16日:聚遠亭周辺における滝音レベル分布調査 主要滝音の庭園内視点場による騒音レベル変化の調査 1995年3月7〜8日:周辺環境音と庭園内騒音レベルの相関関係調査 調査結果及び考察 1)對龍山荘庭園の環境騒音レベル変化は、38dB(A)〜45dB(A)の約7dB(A)の比較的狭い範囲にある。これは、庭園内の水音が終日止まらないことによると思われる。 2)聚遠亭と蹴上交差点の騒音レベル変化の相関関係は0.003、庭園北部四阿と北部隣接道路の騒音レベル変化の相関関係は0.23であった。これは、本庭園が周辺環境騒音レベルの変化を受けにくい音環境を持っていることを示唆する。特に滝音・水音が周辺環境音をマスキングしていると思われる。 庭園内環境騒音レベル分布における滝音・水音の優位は明白である。しかし、この水音の聞こえ方と地形には大きな関連性が存在すると思われる。 4)小川治兵衛は、對龍台前の滝及び正面の大滝、聚遠亭前小池より南の流れをつけ加えた。この改修部分と水音の騒音レベル分布、及び聞こえ方を照らし合わせた場合、断定は出来ないが、小川治兵衛が作庭時に意識的に水音を操作していた可能性が示唆できる。これについては、文献等により更に検討を加えたい。
|