1)他の植物レオウイルスで得られた過去の結果と予備実験の結果から、S2、S5がウイルス粒子表面に存在する蛋白質(P2、P5)をコードすること、さらにこれらがウイルス精製過程で脱落するすることが示唆された。まず、これをP2、P5に対する抗体を用いて証明した。 RDV S2(一部)、S5(完全長)のcDNAをそれぞれ夜盗蛾培養細胞中で発現させた。P2のカルボキシル基末端半分(60 kDa)と89kDaのP5の大量発現が確認された。これらのRDV由来の蛋白質をウサギに免疫し、抗血清を得た。免疫電顕法を用いてこれらの抗体と粒子との反応性を調べた結果、P2血清は粒子と反応したが、P5血清は反応しなかった。次にウエスタン法を用いて精製粒子、精製コア(内殻)粒子との反応性を調べた。P2血清は精製粒子中の130 kD蛋白質と反応したが、コア粒子中には反応する蛋白質は検出されなかった。一方、P5血清は精製粒子中の89kDマイナ-蛋白質と反応した。また、この蛋白質はP5抗体によってコア粒子からも微量検出された。 これらの結果から、P2は予想された通り粒子の外殻粒子に存在するがP5については外殻蛋白質ではなく内殻粒子を構成する微量成分であることが明らかになった。S5については従来S2と同様に外殻蛋白質をコードすると考えられてきた。しかし、興味深いことにコア蛋白質をコードすることが証明された。植物レオウイルスの中で遺伝子-産物の全ての対応が明らかとなったのはRDVが初めてであり、世界的に評価されうる大きな成果である。 従って、P2とこれまでに外殻蛋白質と同定されているP8がヨコバイ培養細胞感染性を支配することが示唆された。 2)ヨコバイ培養細胞株の樹立。 木村の方法(1987年)によってツマグロヨコバイ卵細胞の株化を試みた。初代培養には成功したが、安定継代株はえられていない。 今後、安定なヨコバイ培養細胞株を樹立し、P2・P8抗体を用いたRDVの感染中和試験を行う必要がある。また、RDVS2コードのP2を完全な状態で組み換えバキュロウイルス発現夜盗蛾細胞から精製し、その精製P2を用いて完全粒子の再構成系を確立する必要がある。
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