研究概要 |
栽培ドラムを回転させることによって発生する遠心力を利用し、1Gから5Gまでの高遠心力環境をつくりだすことができる重力制御型ファイトトロンを用いて,高重力が植物の成育におよぼす影響を検討した。 1.現在、生きている細胞や組織、器官、さらには完全な植物体が宇宙での実験に用いられているが、これらは、宇宙船の発着時に、2〜3Gの高重力環境に一時的に遭遇する。この一次的な高重力環境が植物に与える影響について検討した。一時的に3Gの高重力ストレスを加えた後、地上の1G下で植物を成育させ、高重力を与えなかった植物とその後の成育を比較した。一時的に高重力を与えた後成育させた植物は、高重力を加えなかった植物と比べてその成長量に差はなかった。また、高重力の付加時間によらず成長量はほぼ同じ値であり、地上実験では一時的な高重力の付加が植物のその後の成育に影響しなかった。 2.長期的に高重力を付加して植物を栽培し、高重力の影響を検討した。高重力を付加しても植物の発芽は高い割合でおこり、発芽段階における重力の影響はなかった。初期成育については、遠心力が高くなるほど植物高が大きくなるという傾向がみられた。長期の栽培では、遠心力の増加とともに増大する風速の影響を抑えるため栽培ドラムに鉛直に風防板を立てて植物を栽培した。サラダナ、ハツカダイコン、コカブとも3Gまでは問題なく成育したが、5G下では極端に成育量が低下した。これは高重力下、培地中の水の毛管ポテンシャルの低下や重力ポテンシャルの増加のためと考えられた。
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