畜産排水処理に広く用いられている活性汚泥法は沈殿層においてしばしばバルキングが観察され、長期間安定に処理を行うことが困難になる場合がある。このような問題を解決するためには活性汚泥の沈降性を良好に保つことが必要となる。そこで本研究では排水中の懸濁物質を効率よく沈殿させる細菌を分離し、その凝集機構を解明するとともに凝集至適条件を検討した。 活性汚泥から凝集活性を有する細菌のスクリーニングを試みた結果、Bacillusに属する菌株が強い懸濁物質凝集能を有していた。すでにこの活性には菌体外に生産されるタンパク性の物質が関与していることを明らかにしてきたが、種々のクロマトグラフィーでこの活性成分の精製を試みた結果、SDS-PAGEでは常に複数のサブユニットが検出され複数のポリペプチドが会合することによって活性を発現しているものと考えられた。活性発現のためのこの細菌の生育至適温度およびpHはそれぞれ25℃、pH6.5であり、糖源としてグルコース、マンノースを要求し、システインを培地に添加することによって若干の活性の増加がみられた。さらに活性物質の粗製精画分を用いて活性に及ぼす種々の影響を調べた結果、活性はpH3〜8において安定であり、80℃で30min加熱すると活性は激減した。このようなことからこの活性物質の実用性を考えた場合、有利な面がある一方で、活性汚泥中におけるこの細菌の生残性などさらに検討する必要があるものと考えられた。
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