研究概要 |
猫の泌尿器系の患者は疫学調査の猫の病気の中で常に上位を占め、特に猫泌尿器症候群(FUS)は、獣医臨床分野において大きな問題になっている。しかし、その病理発生は研究者の間で種々の説があり必ずしも明らかになっていない。そこで、我々は健康猫と各種泌尿器疾患猫の尿蛋白について、二次元電気泳動法とイムノブロッティン法を用いて尿中蛋白組成の分析を行い、以下のことが明らかになった。 1.試験期間中に本学付属家畜病院に来院し、血尿と排尿困難を示した猫の頭数は全部で13頭であった。また、その病名をCarl A Osborneの報告に従って分類すると、ストラバイトによる膀胱結石症8頭、シュウ酸塩結晶による膀胱結石症1頭、泌尿器感染症2頭、特発性の血尿と排尿困難2頭であった。2.健康猫の尿中蛋白の二次元電気泳動をイメージ・プロセッサーにより分析した結果、その泳動像は約90のスポットから成り、最も大きなスポットはアルブミン(Alb)であり、尿蛋白全体の約90%を占めていた。3.ストラバイトによる膀胱結石症では、血尿の強さによりスポットの数が増える傾向にあった。また、血尿の強い尿では抗ヘモグロビン抗体で特異的に認識されるヘモグロビンのサブユニットが認められた。4.シュウ酸塩結晶による膀胱結石症は、ストラバイトによる膀胱結石症と同様の二次元電気泳動像であり、結石の種類による違いは認められなかった。5,泌尿器感染症の二次元電気泳動像は等電点がAlbよりアルカリ側で分子量2万〜3万に数個の特異的なスポットが認められた。6.特発性の血尿と排尿困難から採取した尿蛋白では等電点がAlbと同等の付近で分子量2万付近に2個、3万付近に2個の特異的なスポットが認められた。7.今回認められた特異的なスポットはいずれも抗アミロイド蛋白とは反応しなかった。
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