研究概要 |
脊髄後根神経節には一次求心性神経の細胞体が存在し、C-線維を持つ小細胞は痛覚に関与していると言われている。これまで我々は、脊髄後根神経節急性分離細胞において、痛覚受容ニューロンに特異的に働くと言われるCapsaicin(CAP)に対して感受性のある細胞は、非感受性の細胞と比較してその細胞が小さく、膜抵抗が大きく、活動電位の持続時間が長いこと、さらに電流-電圧曲線が直線的であるということを見いだし、このことより後根神経節急性分離細胞は電気生理的,形態的に2つのグループに分けられることを報告してきた。今回炎症メディエーターであるpHの低下の効果をラット急性分離細胞を用いて、電流固定法により調べた。その結果は以下の通りである。(1)脊髄後根神経節急性分離細胞のうちpHの低下により膜抵抗の減少を伴う脱分極反応を示すものがみられた。pHの低下に反応を示す細胞の特徴は非感受性のものと比較して細胞は小さく、活動電位の持続時間が長く、膜抵抗が大きく、電流電圧曲線が直線的であった。これらはCAP感受性細胞のものとよく似ていた。このことはpH低下の効果は痛覚受容ニューロンに特異的に働くことを示唆する。(2)pH低下の効果は膜抵抗の減少を伴うゆっくりとした立ち上がりの脱分極であった。これは以前報告したCAP効果の特徴と大きく異なっていた。このことはCAP効果とpH低下の効果は少なくとも1部は異なった機構で働いていることを示唆している。
|