近年、スポーツ界では、高所トレーニングが積極的に取り入れられているが、高所トレーニングは有効ではないという報告もあり、高所トレーニングの有効性についてはまだ明らかにされていない。そこで、今回、自発運動が増加する活動期の夜間と減少する休息期の昼間の低圧暴露が骨格筋の酵素活性にどのように影響するかについて比較検討した。 8週齢のWistar系ラットをそれぞれ夜間低圧群(n=6)、昼間低圧群(n=5)とコントロール群(n=10)の3群に分け2週間飼育した。低圧環境は約550mmHgとしたチャンバーに動物を一日8時間入れ低圧暴露とした。2週間目に体重の2.5%と10%の重りをつけ、水泳を行い運動能力の指標とした。その後、麻酔し頚動静脈より採血し、総蛋白やグルコースの分析を行った。また、心臓、副腎、腹腔内脂肪とヒラメ筋を摘出し、湿重量を測定後、乳酸脱水素酵素とコハク酸脱水素酵素などの酵素活性を測定した。 飼育期間中の体重とエサ摂取量の経時的変化はコントロール群に比して低圧暴露群に低い傾向が認められた。腹腔内脂肪はコントロール群に比して低圧暴露群に有意な減少が認められた。ヒラメ筋重量では低圧暴露群に増加傾向が認められた。赤血球、ヘモグロビン、ヘマトクリットは夜間低圧暴露群で有意に増加した。血糖はコントロール群に高く、一方、総蛋白はコントロール群に低い傾向が認められた。コハク酸脱水素酵素の活性は低圧暴露群で増加したが、乳酸脱水素酵素の活性は低圧暴露群で減少した。運動能力の指標として測定した2.5%の重りをつけての水泳運動時間は低圧群に時間の延長が認められたが、夜間と昼間の群間で差はなかった。 以上のことより自発運動の違いが夜間と昼間に認められても、夜間および昼間低圧暴露時の酵素活性や運動能力に影響に差がないものと考えられる。
|