細胞内情報伝達において重要かつ様々なシグナル伝達物質にpleckstrin homology(PH)が存在することが報告されてはや約2年が経つが、当初6種類に過ぎなかった蛋白質が現在では約100の蛋白質にPHが見いだされるようになった。当初の6種類の中にはチロシンキナーゼ(PTK)が存在しなかったので、PHを含むPTKを新規にクローニングしたいと考えていたが、X染色体連鎖免疫不全症の原因遺伝子としてPHを含むPTK(予想どうり)のBtkがクローニングされ、注目を浴びるに至った。 計画A)に従い、1)まず、PHを有する融合蛋白の作製---pleckstrin(血小板47KDa蛋白)の保存された領域をPCRを用いてGSTとの融合蛋白を2種類作製した。大腸菌から溶出することが非常に困難であったが、次の計画に必要な量は確保できた。 2)1)を用いて会合する蛋白の同定---血小板のcell lysateを用いて、会合する蛋白を探したが、現在のところ見いだしえなかった。しかし、最近になりProtein kinase C、GTP結合蛋白質、あるいは脂質と会合することが報告されたので再検討したいと考えている。自分のPHと他の報告でのPHはそれぞれ由来が違うので、異なる結果になったと考えている。 B)PHを有する遺伝子の同定、機能解析---pleckstrinに存在する2つのPHをまずPCRにて、HL60細胞のcDNAより増幅し、それらをプローブに用いて他の細胞をlow stringencyにてスクリーニングした。ニワトリのB細胞であるDT40においてクロスするものがあったのでクローニングし、現在DNA配列等解析中である。 現在の所、PH含有蛋白質の数は急増し、それらと会合する蛋白は見いだされてはきたが、その機能についてはまだほとんど解明されていない。したがって、細胞内情報伝達機構における重要性についてさらに検討が必要と考えられる。
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