研究概要 |
v-Crkを発現させたラット3Y1細胞(3Y1-Crk)より、v-Crkと結合するラットp130を抗体カラムにより純化し、部分アミノ酸配列決定によりp130のcDNAをクローニングした。cDNAの構造解析から、p130はSrc homology3(SH3)領域と15個のSH2結合部位の集積する領域を持つ新規の信号伝達分子であることがわかった。このp130蛋白質をCas(Crk-associated Substrate)と命名し、3種類の部分領域に対する抗体を用いた免疫学的解析を行った。その結果、p130は正常の3Y1細胞では115kDと125kDの主として2本のリン酸化チロシンを含まないバンドとして検出されるが、v-Crkまたはv-Srcでトランスフォームした3Y1細胞(3Y1-Crk,SR-3Y1)では強くリン酸化をうけた125kD以上のブロードなバンドとして検出されることがわかった。p130はv-Crkおよびv-Srcを発現する細胞の双方でチロシン残基でリン酸化され、リン酸化特異的にこれらの蛋白質と結合していることが示された。ペプチダーゼによるマッピングを用いることにより、v-Srcと結合することで知られる130kDの未知の主要基質と、このp130とが同一分子であることが確認された。また正常細胞では脳、精巣に高発現が認められること、リン酸化に伴いp130は細胞質分画から細胞膜分画へ移行することが観察された。SH2保有分子の共通信号制御分子としてp130蛋白質は全く独自の機能を持つと考えられる。本年度にp130の蛋白質精製をJBCに、遺伝子クローニング・免疫化学的解析をEMBO誌にそれぞれ報告した。
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