研究概要 |
機能亢進状態のラット下垂体前葉における開口分泌動態が血中ホルモンの変化と比例しないというメカニズムに分泌顆粒に存在する蛋白の変化が関与しているのではないかという仮定のもとに,正常および機能亢進(腫瘍)状態の分泌顆粒成分の分子量を解析した。 エストロゲン・ペレットを包埋して数ヶ月飼育し,乳腺の発育によりプロラクチン産生の亢進を確認したラットの下垂体前葉組織から庶糖勾配法によって分泌顆粒分画を採取した。この分画中に存在する成分の分子量を確定するためマトリックス補助レーザー脱離イオン化飛行時間型質量分析計(MALD/TOF)により質量分析を行ったが,ノイズが著しく明瞭な解析結果が得られなかった。これは塩および庶糖の存在によると推測して透析や濾過によって脱塩と庶糖除去を行ったところ,ノイズは減少したが蛋白の回収率が低下し絶対量不足により十分なイオンを得ることができなかった。 そこでMALD/TOFは未精製サンプルも解析可能であるという特性に着目し下垂体前葉組織全成分を解析した。その結果,プロラクチンおよび成長ホルモンと推測される分子量21,000〜22,000のイオン以外に,分子量15,000の部分にコントロール群には認められなかったイオンが確認された。これらの成分についてHPLCで精製してアミノ酸配列を決定する必要がある。 一方,同時に採取した血清成分においても同様の検索を行ったところ,アルブミンも出現するが腫瘍組織と同じ分子量を示すイオンが認められた。アミノ酸配列の決定とともに下垂体組織,特に分泌顆粒成分の成分を反映するか否かの確定が今後の課題である。
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