近年、大深度の高圧作業では空気の代用としてヘリウム混合ガスが使用される傾向にある。本実験では、短時間の高圧作業におけるヘリウム混合ガスの減圧症リスクについて実験的に検討した。ラットを7絶対気圧にて30分間の圧曝露を行う際にヘリウムを80%含むヘリウム酸素混合ガスを用いると、空気を用いた場合にはみられることのない減圧症による死亡例や生存例中の脊髄型減圧症罹患例がみられる。しかしながら、麻痺を起こしても生存例では血管内気泡は減圧後60分以内に消失する。一方、Heを半減させたヘリウム窒素酸素混合ガス(3種混合ガス)においても死亡例が確認された。また、生存例中にも脊髄型減圧症罹患例がみられた。しかしながら、生存例の中には減圧後60分以上経過しても血管内気泡(右股静脈)の出現が認められる例もあった。以上の結果から、比較的短時間の高圧曝露について次のことが知られた。(1)ヘリウムが含まれると減圧症リスクが高くなる。この際、ヘリウム混合比が高いほど減圧症リスクが高い。(2)脊髄型減圧症はヘリウム酸素混合ガス曝露に限ったものではなく、ヘリウム混合比を半減しても生じる危険性がある。(3)減圧症リスクとは反対にヘリウム混合比が低くなると気泡消失には時間を要する。以上の結果は日本衛生学会(発表予定)および日本高気圧環境医学会(発表、投稿予定)等で報告する。
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