scidマウスは、2本鎖切断を修復できない放射線感受性のミュータントマウスである。このマウスは、遺伝子再構成ができないため成熟したT細胞が分化できない。このマウスを用い、放射線とエチルニトロソウレア(ENU)による胸腺リンパ腫発生の年齢依存性を明かにし、発癌の過程におけるマクロファージの関与を検討することを目的とする。 「結果」 (1)発生率:新生児期に放射線を1GY照射することで、100%胸腺リンパ腫を誘発できるが、8週齢では、30%しかできない。ENU(400ppmの飲料水)場合も、5週齢では70%の個体に発生するが、8週齢では、25%にしかでない。処理年齢が若いほど、胸腺リンパ腫発生の感受性は高い。 (2)発生した胸腺リンパ腫の表現形をフローサイトメトリーで解析した。対照群のsicdマウスの胸腺T細胞は、IL-2R+、CD4-8-の末分化な細胞が多かった。しかし、誘発された胸腺リンパ腫は、CD4+8+の分化した性質を示した。しかし、膜表面上にT細胞受容体(TCR)、CD3抗原の発現は認められなかった。しかし、DNAレベルでは、TCRの再構成が起こっていた。恐らく、異常なTCRの再構成が起こっているために、正常な抗原が膜に発現されないのだろうと考えられる。 (3)マクロファージに関しては、膜腔内マクロファージ、骨髄マクロファージ、肺胞マクロファージについては検討済みであるが、胸腺内マクロファージの加齢変化については、時間の都合上検討できなかった。
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