研究概要 |
綿毛不動症候群の発生機構解明のため、正常と疾患綿毛を比較しながら主として免疫組織学的所見を検討しました。4種類の抗ダイニン抗体(AD2,D-1667,D-5167,D-6168)のうちウニ精子鞭毛から取られた軸糸ダイニンの重鎖を抗原としてつくられたもの(AD2)が正常のヒトおよびラットの気道綿毛を蛍光抗体法、per oxidase-antiper oxidase法において明らかに染色しました。AD2を1次抗体として用いると、正常ラット気道綿毛のSDS-PAGEおよびウエスタンブロットでは分子量約450kDの単一バンドが検出され、pre-embedding法による正常ヒト気道綿毛の免疫電子顕微鏡では外側ダイニン腕が特異的に認識されました。綿毛不動症候群の動物モデルであるWIC-Hydオスラットならびに綿毛不動症候群患者の気道綿毛はいずれも光学顕微鏡レベルでAD2によって染色されませんでした。したがって、AD2は正常軌道綿毛の外側ダイニン腕のダイニン重鎖を認識し、自分が調べた先天的疾患綿毛はすべてその抗原を失っていることがわかりました。AD2は綿毛不動症候群を診断、分類するために有用であると考えられました。軸糸ダイニンは分子量約1900kDの巨大蛋白質であり、2-3個の重鎖、3個の中間鎖、数個の軽鎖よりなると考えられています。重鎖にはATPase活性があり綿毛運動にとって欠くことのできないものと考えられ、中間鎖はダイニンをチュブリンに付着させるために必要なのではないかと言われますが依然として明らかではありません。また、綿毛不動症候群になぜ内蔵逆位が合併しやすいのかも解明されていません。これらの問題を解明するため研究が続けられています。
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