研究概要 |
ヒトおよび肺癌細胞培養株におけるホスファチジルコリン特異的ホスホリパーゼC(PC-PLC)に対する作用と増殖抑制との関わりについての検討を行った。細胞増殖抑制に対するPC-PLCの作用点を明らかにする目的でPC-PLC特異的阻害剤であるD609の細胞増殖抑制をMTTアッセイで検討した。(1)各種ヒト肺癌培養細胞株(PC-9,PC-14,H69等)に対するPC-PLC特異的阻害剤であるD609は中等度の細胞増殖抑制効果をみとめた(IC_<50>=^〜25μg/ml)。(2)遺伝子移入細胞での検討:H-ras遺伝子、erb-2遺伝子導入により形質転換したfibroblast NIH3T3細胞においては親株と比べてD609の細胞増殖抑制に差をみとめなかった。TNF遺伝子移入肺癌細胞はD609の細胞増殖抑制に対し、親株に比し感受性の増強をみとめた。IL-2導入肺癌細胞においては差をみとめなかった。(3)そこでPC-PLC活性を[^<14>C]ホスファチジルコリンを基質としてジアシルグリセロールの産生を測定することにより解析した。IC_<50>=0.25^〜50μg/mlの濃度のD609にTNF遺伝子移入肺癌細胞およびを24時間接触させた後、細胞のPC-PLC活性を測定した。D609は濃度依存的にPC-PLC活性を抑制した。以上によりPC-PLCによる癌細胞の増殖阻害にTNFの細胞内情報伝達機構が関与する可能性が示唆された。
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